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    2009.03.20
  • posted by kenshin.

JACKIE NICKERSON 「 FARM 」




ジンバブエは今から110年ほど前、イギリスによる支配が始まり。その後、植民してきたイギリス人ら白人は、もともと住んでいた黒人から肥沃な土地を奪い、タバコ栽培や牧畜を行う農場を作ります。 その農場をネイティブの人達に返そうと戦う大統領ロバート ムガベはアフリカでも希望の持てる指導者の一人であるが、その非常に強い反白人思想や同性愛者への憎悪、嫌悪者、強気の政治手法、外交、経済政策の失敗等で独裁者と批判を受ける事も多く 秘密警察による監視や反体制派への暴力など言論の統制を受けることから「世界最悪の独裁国家」などと評され、経済政策の失敗は持てる者と持たない者の差を大きく開けることになる。しかしながら、白人農家の土地を強制収用し、黒人農家に分配したり、独立闘争を勝ち取り戦った黒人の人々の国民的英雄なのは間違いなく、起こりうる事実の前において立場や目線、距離感、状況等が変わればしばしば見えてくる物や意見、感じてくるもの、体感してくるものも違ってくるものである。 そんなバックグラウンドを持ち、今なお政治不安や、劣悪な経済的状態のジンバブエで 日々、トウモロコシ、紅茶、換金作物等を植えて、収穫する、ジンバブエの農場で働く人々を写真家JACKIE NICKERSONはかなり面白い目線で撮影に臨み、素晴らしい世界感を浮き上がらせる事に成功しています。
彼女は90年代ELLE誌やマリ•クレール、VOGUEなどで活躍しブレイクしたファッションフォトグラファーでありその素晴らしいキャリアのバックグラウンドをもつ彼女であるが故にこのような新しくすばらしいポートレートの世界を織りなす事に成功したのかもしれません。 JACKIE の目線やとらえている被写体のそれはまさにかってFSAプロジェクトの写真家達がこぞって撮った農村の惨状およびその復興を記録するための物とは全く違った目線で撮られています。 それは彼女のFASHION PHOTOのバックグラウンドのせいなのか、辛い労働に日々従事している人達をもポジティブであり、夢があり、瑞々しい感覚の新しいポートレートへと昇華しています。





農場の人達が肌を日光から守る為に泥を顔に塗ったくった農業労働者の女性のポートレートはまるで少し厚めのメーキャップを施したようなファッション雑誌の中のビューティーイメージのような感覚を呼び起こします。ファッション雑誌の熟練のトップモデルたちが見せるような目の配り具合や立ち方、ポーズ、本当にちょっとした腰の入れ方や表情等をジンバブエの農場で働く人々に重ね合わせ、彼らが一瞬見せる美しい姿をすかさず切り撮っています。写真の画角やクロッピング等はまさにFASHION誌に置けるそれであり、特筆すべきは、農作業に着ているビニールを継ぎ合わせたり、引き裂いたような衣服や何層にも重ねて着ている衣服など、ここでの農作業者達が意図的でないにしろ作業に着ている野良着等に新しい解釈のファッション性を見いだし結果的に素晴らしいスタイリングを行っている農作業者達のポートレートを紡ぎだしており、そこには不安定な国の事情に翻弄されながらも素晴らしい大自然と大地の恵みの中、地に足をつけて暮らすジンバブエの人々が、ファッションで培われてきた彼女の目線とレンズを通して、ぼろぼろの布っきれやビニールの袋を巻き付けただけの間に合わせの衣装を着込んだ人々を新しい解釈のポートレート写真としてポジティブに、そして人々の内面の豊かさを表現した素晴らしいドキュメントポートレイト写真として紡ぎだしています。個人的に新しいジャンルであり、ファッションとドキュメンタリーのすばらしい出会いのポートレート写真として心をふるわさせられます。







JACKIE NICKERSON
写真家
アメリカ、ボストン生まれ。 現在はロンドンをベースにフォトジャーナリストとして活躍。 1990年代はファッションフォトグラファーとしてVOGUE, ELLE,WALLPAPER誌等で活躍する。 「FARM」のポートレートや聖職者のポートレート等数々の賞を受賞しています。

TEXT BY KESO

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