Culture

>> Culture : Home

  • Posted on
    2009.06.22
  • posted by kenshin.

猫文学10選

巷は空前の猫ブーム、しかし当の猫達はそんな事等知らぬ顔。猫、ねこ、ネコ!
「猫は365日、人間のすいとり紙の役目をしてくれるからエライ。」と作家、今井美沙子も書く様に人々を魅了してやまない猫達。

こればっかりは飼ってみなければわからない何とも懐の深い生き物。
猫の脳の構造は人間によく似ていて、一説によれば人間、サルに次いで優秀とか。
猫は50弱の言葉を音と状況のつながりで聞き分け、また飼い主の感情を敏感に察知します。
そんな猫に魅せられた猫狂ひな文豪達の猫の登場する文学本 私的ですが10選集めてみました。






「猫と庄造と二人のおんな」    谷崎潤一郎

一匹の猫を中心に、猫を溺愛している愚昧な男、猫に嫉妬し、追い出そうとする女、男への未練から猫を引き取って男の心をつなぎとめようとする女の、三者三様の痴態を描く。
庄造の猫の溺愛ぶりは猫好きの人々は鏡で自分を見ている様な気持ちにさせてくれる。



谷崎潤一郎
1886年 東京生まれ
明治末期から第2次世界大戦後にかけて活動した「耽美主義」とされる作風で、「痴人の愛」「細雪」など多くの秀作を残し、文豪と称された。










「夢先案内猫」    レオノール•フィニ

日常のあわいに忍びこんできた猫が、異界へ、白昼夢へと、スフィンクスのごとく人間を導いていく。幻想小説
コルシカ島の廃墟となっていた僧院を買い取り、アトリエとして使っていた別荘で数十匹の猫に囲まれながら生活していた事からも伺えるように、レオノールにとって猫は、愛玩動物ではなく、人格を備えた存在でありなくてはならないパートナー達であったに違いない。



レオノール•フィニ 
1908年アルゼンチン生まれ
幻想美術画家
アルゼンチン人を父に、イタリア人を母に、南米ブエノス・アイレスで生まれる。幼年時代はトリエステで過ごし、17歳で個展を開いたのを機に家族と離れ、単身パリに出て、第二次世界大戦直前までとどまる。
エリュアール、エルンスト、キャリントン、バタイユらと親交を結ぶが、シュルレアリスムのグループに属することはなかった。その後、ローマ、パリ、コルシカと移り住みながら、幻想性に富んだ絵画をはじめ、バレー、オペラ、映画などの衣裳や装置のデザイン、宝石デザイン、小説など、幅広い芸術活動をすすめる。
「20世紀が生んだ最も独創的な空想力を誇り得る幻想画家の巨匠」と彼の澁澤龍彦も絶賛。











「猫語の教科書」    ポール・ギャリコ

ある日、編集者のもとへ不思議な原稿が届けられた。文字と記号がいりまじった、暗号のような文章。相談を受けたポール・ギャリコは、それを解読してもっと驚くはめになる。原稿はなんと、猫の手になる、全国の猫のためのマニュアルだった。
「快適な生活を確保するために、人間をどうしつけるか」など、びっくりする内容が、、猫が人間を乗っ取る内容が書かれた本だったのです。 
猫文学の秀作
ポールギャリコの猫文学の最高峰『ジェニィ』よりもあえてこちらをチョイス




ポール・ギャリコ
1897年ニューヨーク生れ。
スポーツライターを経て作家になる。1941年に発表した『スノーグース』で一躍有名となった。
無類の猫好きとしても知られ、猫を主人公とした小説『ジェニィ』は世界中の読者から愛されている。著書は『ポセイドン・アドベンチャー』『雪のひとひら』『ハリスおばさんパリへ行く』『ザ・ロンリー』『まぼろしのトマシーナ』など多数。










「ひげよ、さらば」   上野瞭

日本児童文学者協会賞作品
記憶喪失の猫ヨゴロウザが野良として生きる楽しさや苦しさを野良猫共同体の中でリーダーとして野良犬の群れとの戦いや仲間達との確執、友情、憎しみ等の猫社会のなかで泥臭く、人間臭くドライに描かれている大巨編。
NHKの人形劇にもなってました。
児童文学とされているが大人用でしょう、この物語って感じの一冊。最後のどんでん返しも一興。


上野瞭
1928年京都生まれ
同志社大学文学部文化学科卒。高校勤務のかたわら自ら童話を創作しながら児童文学評論を手がけ、1974年から同志社女子大学で児童文化を担当。その後、大人向けの小説も多く書いた。











「内なる猫」    ウィリアム•バロウズ

「もちろん最初はネコ好きでもなんでもなかった。たまたま田舎暮らしをはじめるとネコが何匹か姿を見せるようになった。最初は家に入れるかどうかも迷っていたし、飼うなんて面倒だと思っていた。やがて灰色のネコ、ラスキーは「わたしのネコ」となり、ラスキーなしの生活など考えられなくなる。」
とバロウズが語る様にあの末期的な麻薬中毒者で酩酊しながら妻の頭を猟銃で打ち抜くというあのバロウズも猫の魅力に取り付かれた猫中毒者の一人。
愛おしいネコとの日常生活、失われた過去への想いが、幾つもの断章となって語られる、バロウズの自伝的小説。



ウィリアム•バロウズ
1914年アメリカ生まれ
1950年代のビートニックの立役者の一人。
私生活は無茶苦茶でボーイフレンドにふられたあてつけに小指を詰めたり、ウィリアム・テルごっこをして妻を過って射殺するなど、エピソードにはこと欠かない。
カットアップ手法を駆使して書き上げた「裸のランチは」有名。










「ノラや」   内田百閒

夏目漱石の門下生の猫バカ先生、内田百閒先生宅から忽然と姿を消した「ノラ」捜索の顛末記。失踪2週間後の記述。
ついで居つきながらも病死した迷い猫のクルツ 愛猫さがしに英文広告まで作り、「ノラやお前はどこへ行ってしまったのか」と涙堰きあえず、垂死の猫に毎日来診を乞い、一喜一憂する先生の、あわれにもおかしく、情愛と機知とに満たち愉快な連作14篇。
本当に猫を愛した先生の心温まる猫文学の骨頂。



内田百閒
1889年 岡山生まれ
文学上の師匠に当たる夏目漱石や、琴、酒、煙草、小鳥、鉄道、猫、郷里の銘菓大手まんぢゅうなどを愛し、それぞれについて多くの著作が残されている。
人物的には皆からかなり慕われ黒澤明監督の映画「まあだだよ」のモデルともなった人物。
「贋作吾輩は猫である」も秀作










「猫文学大全」    柳瀬尚紀 編訳

猫の日の制定にも関わっていたとされる翻訳家の巨人 柳瀬尚紀のお眼鏡にかなった猫作品をサルトル、マークトウェイン、ギャリコ等といったそうそうたる作家達の猫についての作品とピカソ等の猫の挿絵を収集し編んである 猫好きの為の猫文学の猫アンソロジー
残念ながら現在、絶版。




柳瀬尚紀
1943年北海道出身
英文学者、翻訳家  ルイスキャロルの「不思議の国のアリス」等の翻訳を手がける日本を代表する翻訳家。
1987年には「猫の日制定委員会」を発足させるなど、猫好きとしても有名である










「牡猫ムルの人生観」   エルンスト・テオドール・アマデウス・ホフマン

人間の言葉はしゃべれないが,人語を解し教養高い牡猫のムルが自伝を書いたということで出版するために印刷へまわしたのだが、ムルがどうやらご主人様の本を破って下敷きにしたりした反故が混じっていて、別の話も紛れ込んでいる。それが、ムル執筆当時のご主人で楽長ヨハネス・クライスラーの伝記本でつまり猫の自伝と人間の伝記とが交互に入り交じるという形でコントラストがついた物語。かなり古い作品なので新訳で読む事をおすすめ。
飼い猫が死んだときに友人に死亡通知を出すなど猫狂い。



エルンスト・テオドール・アマデウス・ホフマン
1776年ドイツ生まれ
ドイツの作家、作曲家、音楽評論家、画家、法律家。文学、音楽、絵画と多彩でドイツロマン派の雄。
くるみ割り人形等が有名









「空飛び猫」   アーシュラ・K. ル=グウィン

数々の文学賞を総なめにしてきた「ゲド戦記」や「オルシニア国物語」を書いたあのSFの女王である彼女のファンタジー作品
4匹の翼の生えた猫の兄弟の新しい世界へ旅立つ冒険奇譚!第四弾迄出ており 翻訳には猫好きを公表している村上春樹が手がけています。児童文学ながら素晴らしいできばえ。現在4弾迄出てます。
さすがは西の善き魔女!




アーシュラ・クローバー・ル=グウィン
1929年アメリカ生まれ
SF、ファンタジー女性作家の巨匠。
両性具有の異星人と地球人との接触を描いた『闇の左手』でヒューゴー賞、ネビュラ賞を、1970年に同時受賞。 日本では「ゲド戦記」の作者としても有名。










「吾輩は猫である」  夏目漱石

最後は猫文学ど真ん中のこの作品 
「吾輩は猫である。名前はまだ無い。 どこで生まれたか頓と見當がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いて居た事丈は記憶している。」冒頭のこの書き出しはあまりに有名。
英語教師、珍野苦沙弥(ちんの くしゃみ)先生の家に飼われている猫である「吾輩」の視点から、飼い主苦沙弥先生の一家や、そこに集う彼の友人や門下の書生たちの人間模様を風刺的に描いた、漱石の処女小説でなんとも歯切れのいい文体。
英文学者 夏目漱石が 小説家として変身を遂げた作品。 
漱石もホフマンと同じく飼っていた猫が死んだときに死亡通知を出しています。


夏目漱石
1867年東京生まれ
明治の文豪。「こころ」や「それから」など代表作は多く、その時代を見透かす目は素晴らしく、その作品は現在読み返してみると神経衰弱を頻繁に煩いながらも自分と向かい続けた文豪の生き様が伺える。



text by keso


top