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  • Posted on
    2010.08.12
  • posted by kenshin.

ウォードの箱








無限なものが二つある。

宇宙と人間の愚かさである。
しかし、宇宙に関していえば、私はまだ絶対の確信を持っているわけではない。

アインシュタイン[アルベルト・アインシュタイン]
(20世紀の理論物理学者、ノーベル物理学賞受賞、1879~1955)




宇宙的ではなく宇宙なんだ。

岡本太郎[おかもと・たろう]
(芸術家、1911~1996)



植物は人間から見られることを求め、見られることが救済なり。

アウグスティヌス 「語録」






未だ解き明かされない謎 「宇宙」 その魅力たるや無限大である

日々そんな宇宙を手に入れる事や感じ取る事などを夢想のように思いを馳せる。
しかしそんな創造主の様になれる訳がなく、現実にうちひしがれ、日々の勤めに出ながら机に向かい叶わぬ思いに心を募らせる、、、


そのような人にこっそりと教えたい箱がある。


宇宙とまでは行かないが小宇宙を手に入れる箱があるのである。


その箱の名前は「ウォードの箱」 ナサニエル•バグショー•ウォードが1829年に発明した箱でこの発明は偶然の発見であるものであった。


医師であったウォードは、植物学にも熱烈な興味があった。彼が個人的に収集した植物標本は、実に25000個を数えた。しかし彼の庭園があるロンドンのウェルクローズ・スクエアに生息していたシダ植物は、石炭燃やした煤煙とそこから生じた硫酸ミストが酷く蔓延していたロンドンの大気汚染で 完全に侵されてしまっていた。ところが外にあるしおれたシダに比べ、ウォードが蛾などの繭を保管していたボトルの中では、シダの胞子が少量の肥料で発芽し 成長することを発見した。ある日、彼は蛾のさなぎを生かせるためにガラスの壺の中に置き、一緒に近所の土も入れておいた。しばらくすると、土から芽が出ていることに気づいた。また、芽が、葉から水を蒸散させると、ガラスの側壁に集まり、水滴が側壁を伝って落ち、土と芽に吸い取られることに気づいた。

これは容器内部の植物に対する雨サイクルを作り出し、最小の注意で健康な植物を生育させる場所を作り出している。雨サイクルにもかかわらず、ウオード医師は、植物が乾かないように、ときどき数滴の水を加える必要があることを見いだした。数週間後、ほっておいても植物は相変わらず元気に育っていた。
ウオード医師は、あらゆる種類の植物とあらゆる大きさの容器で生育実験を行った。結果として、いわゆる「ウオードの箱」が誕生した。これは、植物が発芽し、生育する土と湿り気を含む密閉された箱であった。

その箱は19世紀・大英帝国の時代背景の中、大変画期的な発明であった。当時、植民地から宗主国、植民地から別の植民地へと、多くの植物が運搬された。運ぶ目的は研究用、観賞用、コレクション、公的なもの、私的なもの、など様々であるが、有用資源の開発という大義名分もあり、実際に数多くの重要な新資源を欧米にもたらした。それらは数多くの新発明、今日では欠かせない日用品などの元にもなった。ゴムやコショウが代表的である。
この時代、「プラントハンター」と呼ばれる人々が世界中から植物を蒐集していた。現代、商品作物として、医薬品として、園芸用として見かける植物の中にも彼らが発見したものは数多いが、はるか南方の未開の地から植物を輸送することは困難を極めた。また、パトロンとなっていた王侯貴族も植物蒐集に相当な精を出しており、そうでない人々も園芸や庭園を楽しむようになっていた。
こういった時代、「ウォードの箱」が登場したことにより、植物の運搬は格段に楽になり、成功率もあがった。

wikipediaより参照




「ウォードの箱」に収まるシダ植物や名もわからぬ身の回りの静香に身を潜めながら棲息しているコケや山野草達。
緑緑とする植物を眺めては自己中に小宇宙を見つけ、ほくそ笑むも良し、大宇宙に思いを馳せながら かりそめの創造主として夢想し、上部または側面からこの「ウォードの箱」を眺めつつ、日々の現実から解放されるのも良し。

「ウォードの箱」は汚染される地球を脱出するかのごとく小宇宙を詰めた箱である。






text by keso










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