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  • Posted on
    2009.10.30
  • posted by kenshin.

PUPPET





ヨーロッパの真ん中に東西に細長い六角計の形をした小さな、小さなチェコという国があります。 その国は、人形に心をあたえ、見るものの心を突き動かし、幻想的で美しい、どこか心暖まる懐かしい不思議な世界へ導いてくれます。その世界は『チェコアニメ』称され、世界中の大人や子供の心を魅了し続けています。





チェコ=人形劇、アニメとして世界的に有名ですが、その歴史は自分たちの母国の文化、言語を守るための歴史でもある。
チェコは大国に囲まれた小さな国で、近隣の大国に占領され、抑圧され、表現の自由を奪われた歴史を持つ。
チェコの芸術家たち、彼らに唯一表現の自由を認められた場所が子供向けの作品でした。
彼らは子供たちや国の未来を思う気持ちを込め、自分の持つ才能と技術を惜しみなく、チェコの文化や言語、歴史、古代民話を子供向けのアニメーションに注ぎ込んだ。『文化の命綱』とも言われ、自国の文化を守るための最後の手段、最後の表現方法だったと言われる背景がある。






チェコアニメは主に10分から30分足らずの『喋らず語る人形の世界』それらは作家たちの職人的作業によって一つ一つ作られていく。
人形だけでなく粘土や切り絵、セルといった様々な素材を使い分け、それらを少しずつずらして撮影することによて、よってチェコアニメ独特の繊細で滑らかな動きを作り出す。一日に作れるのがほんの数秒といった気が遠くなるこの作業はたった一つの表情しか持たない人形たちに命と心を吹き込む重要な作業です。
私は何本かチェコアニメを見ましたが本当に人形が持つ繊細な表現力にとても驚きました。近年、ハイテクなCGアニメが主流の中、日本のアニーメーションに見られる破壊や暴力、下品な言葉に支配されたものではなく、台詞もなく語りと音楽と手作業で作り上げた人形の表現力のみで物事の本質や自然の大切さなど普遍的で平和的なストーリーを表現している。
先駆者でありチェコアニメーションの祖と言われたイジー・トルンカは1945年トリックブラザーズというアニメーションスタジオを設立、その第一作『動物たちと山賊』は、当時すでに高い評価を得ていたディズニー作品を破り、ベネチア国際映画祭、カンヌ映画祭トリック映画最優秀賞を獲得。映像の中でイキイキと存在する人形たちに多くの芸術家たちが魅せられトルンカの後に続いた、トルンカはその後もアンデルセン童話、チェコ童話などを繊細な色彩と精密な表現により詩的で芸術性の高い作品を世に残していくが1969年57歳でこの世を去る。

現在も彼に影響を受けた作家たちが人形に命と心を吹き込み世界中に夢と希望を運んでいます。

『人形は人間のミニチュアではない。人形には人形の世界がる』
イジー・トルンカ


text by G,M




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