Interview

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  • Posted on
    2008.12.06
  • posted by kenshin.

RICK LUANDA of CHAIN GANG

YS 伝説のパンクバンドと言われるけれど、Chain Gangを始めて何年くらい?

RL 30年以上になるよね。最近は、パフォーマンスはほとんどやらない。アルバムを作ったり、映画を作ったりしているよ。

YS これまでずっと社会問題をテーマにしたり、社会に対する抗議の意味を込めた  曲ばかりを発表してきたわけだけれど、30年間、同じように戦ってきたと思う?

RL「戦い(fight)」っていう言葉が適切かわからないし、そんな崇高なもんでもない。ミュージシャンが曲を書くときは、何かにインスピレーションを受けるわけだよね。車についての曲を書くやつだっているし、恋愛なんて永遠のテーマだろ? 自分が経験したことを書いてもいい。オレたちの場合は、単に、目にとまることが、腹が立つことだったりする、それだけのことだと思う。ロックにはビールがよく登場する。オレの曲にもビールが登場する。だけどその曲において、ビールが重要なわけじゃない。もちろん録音するとき、ビールは重要だけど。


YS メッセージ性は、意識的なもの?

RL メッセージを送ろうと思ったことはないと思うな。単に自分のアティテュードを反映しているということだと思う。作曲に限らず、生きるという行為には、二通りの選択肢があると思うんだ。ヘミングウェイが言ったように、ボクシングについて書くためには、戦いを体験しなければいけない、というやり方がひとつ。東京のポストカードを見るだけで曲が書けるやつもいる。わかるかな? オレは、世界で起きてることやインスピレーションの源にオープンでありたい。今、オレとキミが話をしていることから、曲が一曲できるかもしれない。その程度のことなんだよ。オレたちが曲を書いたり、書かなかったりすることで、誰かが傷ついたり、誰かを救えたりするわけじゃないんだ。

YS Chain Gangの曲や気になるテーマに共通点はある?

RL たとえば、天安門事件が起きたとき「Beijing」という曲を発表した。今年は、「Boycott Beijing Bling」っていうシングルを一曲発表した。北京五輪が開催されるときに、ダルフールの惨状を見て、インスピレーションを受けたんだ。別に中国だけに恨みがあるわけじゃなくて、単にダルフールで虐殺が行われているのに、それをどこの政府も放置して祭典ってどういうことだ、って思ったんだよ。別に政治議論を始めたいわけじゃない。実際のところ、遠くの国で何が起きているのか、オレたちが真実を突き止められるわけでもない。ただ、おかしいだろって思うことに対して、表現活動をやる権利はあるわけで、その権利を行使してるってことだ。

YS 自分の表現活動について、使命だと思う人もいれば、仕事だと思う人もいる。あなたはどう考えている?

RL なんだろう。自然に続けて来たこと、ってとこかな。曲を書いて、録音して、それが終わったら、また曲を書いて、録音する、そうやって続けてきたこと。たとえばシナトラは、歌うために生まれてきたんだと思うけれど、歌うことが彼の使命だったわけではないと思うんだ。歌うために生まれてきて、それがうまくいった。オレが音楽をやるために生まれてきたのかはわからない。ただ、一軒家に生まれたら、自然に芝を刈ることを覚えるだろ。それに似てるかな。自分たちがやってきたことが、何を意味するのか、振り返ったことはないけれど、少なくとも少しでも好きじゃなかったら続けてこなかっただろうな。


YS 続けていくことは難しい?

RL 難しいと感じたことはないな。年をとったから音楽をやめなければいけないっていう法律はないだろ? 音楽だけで食っていくのは確かに難しいよ。でも、音楽で金を稼ごうと思ったことはないから、食おうと思っているヤツの苦労はわからない。でも、オレはそれに救われているかもしれない。

YS 後続の世代に伝えたいことはある?

RL どの世代にも、戦わなければならない戦い(battle)があると思うんだ。それは音楽に限ったことではなくて、自分の表現活動が何かに貢献できるなんて傲慢なことは思っていないけれど、人間として政治的、社会的であることは、この世に生をうけたときにサインした契約みたいなことだと思っている。たとえば、盲目の人が横断歩道をわたろうとしていたとする。わざわざ進路を変えて助けに行くのは正直言って面倒くさいけど、他に誰もいなかったら、普通は助けにいくだろ。人間として、誰かに強制されたわけでもないけれど、やらなきゃいけないことはやるってことだ。つまり、この「文明」と呼ばれる存在の文脈を理解する努力をする、そのなかで自分ができることをやるってことなんだと思う。


Ricky Luanda
1970年代からニューヨークのアンダーグラウンドなパンクシーンで活動する伝説のパンクバンドCain Gangのボーカリスト。
迫力のあるライブで評判を確立し、1990年代には、Matador Recordsからアルバム「Kill For You」「Perfumed」を発表した。
http://www.matadorrecords.com/chain_gang/


INTERVIEW : YUMIKO SAKUMA http://www.yumikosakuma.com/

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