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  • Posted on
    2009.01.30
  • posted by kenshin.

サブプライムローン問題に学ぶこと

「サブプライムローン』
主に、アメリカ合衆国において貸し付けられたローンのうち、優良顧客(プライム層)向けでないものがそう呼ばれている。マスコミを通してしばしば低所得者向けローンとの説明がなされ「低所得者に多額の貸し付けを行った」というニュアンスで取り上げられていることがあるが、厳密には通常の住宅ローンの審査には通らない様な、信用度の低い人向けのローンのことである。

「過熱」
日本ではあまり馴染みが無いが、アメリカにおける住宅ローンの返済方法として、当初の金利を抑えたり、最初の何年間かは金利のみの支払いを行ったりと、当初の返済負担を軽減したものが普及している。そのため債務者が自分の返済能力を無視した借入を行うことが可能となり、そのような貸付が増加していってしまった。
本質的には債務不履行(返済不能)のリスクは、通常の住宅ローンよりも高い構造なのだが、購入した住宅の価格が上昇している場面では、返済の破綻が必ずしも表面化しなかったのである。
債務者の給与所得が上昇せず、生活費(物価)が上昇して、本来であれば返済に行き詰まる状況であっても、購入した住宅の価格が上がっている場面では、債務者は住宅価格の値上がり分について、担保余力が拡大することから、その部分を担保に、新たに追加借入を受けることまでできてしまったわけだ。信じ難い話ではあるが、これにより破綻を先延ばしするだけでなく、消費を拡大することまでできたのだ。
また、住宅価格が大きく上昇すれば、買った住宅を転売してローンを返済し、さらに売買差益を得ることも可能となる。当初負担の軽い返済方式の普及によって、所得からすれば本来住宅ローンを組めない人にまでローンを組む人が増え、しかも住宅ブームが拡大する間は、返済も含めた生活の破綻さえも表面化せず、むしろ住宅ブームを加速させる結果となってしまったのだ。そして更に、高利回りの債権開発の要請や、証券化する債権の需要から顧客の開拓が進められ、アメリカへ移民して間もないクレジットヒストリーの無い外国人や、プライムローンの対象にならない顧客にも積極的に貸し付ける様になり、更には住宅価格の上昇を前提として(「捕らぬ狸の皮算用」的に)、低所得者層にまで半ば強引な貸付が行われ、サブプライムローンが拡大していったのである。

「デリバティブ(金融派生商品)」
そもそもサブライムローンは、返済初期の利息や返済金額を抑えることにより、後々高率の返済利息を期待できる貸付債権である。なのに一方では、高いリスクを内包しているこのサブプライムローンを分割し、他の安全な証券と組み合わせて金融商品を構成することで「リスクを制御・抑制することが出来る」という幻想に取り憑かれたわけだ。そもそもハイリスクハイリターン金融商品には高い利回りがつくが、サブプライム証券の場合、そのリスクだけ隠されてしまい、ローリスクハイリターンに見せかけられてしまったことに、この問題の本質が見え隠れする。
このサブプライム問題を材料に、世界中で株価の急落や信用市場の混乱、果てはFRBによる公定歩合の緊急引き下げといった事態にまで発展した最大の要因は、幾層もの証券化を通じて住宅ローン債権の本来のリスク特性が見えなくなっていた中で、市場参加者でるファンドや個人投資家の多くが、パニック的に極端なリスク回避行動に出たことにある、と言えないだろうか。

「疑念」
資本主義経済の法則に則った自由競争社会を維持し、正常な経済活動を支えることは、結局自分達の生活に直接関係する重大な問題でもある。今は落ち着きを取り戻した原油価格の高騰で、その意味をイヤという程思い知ったことだろう。
むろん、利ざや目的の投資(金儲け)も合法である。しかし、そのモノ本来の価値を見失うことは、極めて危険なことである。「何かを産み出すこと、ゼロからモノを作り上げること」から離れて、本来の経済活動は無い。本当の「リスク」とは、何が正しい情報か判断できなくなる事である。
サブプライム問題を発端にした今回の世界恐慌から何を学び、どう成長できたかが、今後の人類に問われいる様に思えてならない。

text by WK

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