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  • Posted on
    2009.07.06
  • posted by kenshin.

食べるということ






「病(やまい)」を予防の観点から見つめ直したとき、まず「医・薬」、次に「食」、そして「農」へ。
養生、検診という予防医学の重要性は、東洋医学における「未病は養生で治す」という「医食同源」思想からきている。

『医は食なり』

「薬膳」がルーツの「薬食同源」という考えを、日本風にアレンジして出来た「医食同源」思想。中国では3000年以上も前から「食養生」として伝えられてきた。東洋医学で言うところの、食べ物でまず病気を予防し、さらに治療にも役立てていくという考え方が、それである。
「未病」とは、病気の一歩手前の状態のこと。現代では、ストレスや慢性疲労、睡眠不足などなど、生活習慣や労働環境に起因していることが多い。その未病状態の体に対して、自ら病を見つけ、手当てしながら癒し、生命を養うことを、まさに「養生」と呼ぶのである。
現代医学には、食学や養生学という分野は存在しない。今の医学は、診断して治療することを主な役割としているのが、その大きな理由の一つであるからだ。
しかし、医療の理想論から言えば、病気にならないのが一番。例えば、火事でも「防火対策」が最重要。
「火の用心、カチカチ」と大きな声で地域を回る運動が、未然に火事を防いでいるという意味では、病気の予防における養生も、これと同じである。
戦後から現在迄に日本の食料事情は大きく変化した。まず主食が米からパンに...。パンになると副食も肉を中心とした動物性タンパク質とかチーズ、バターなどの乳製品を摂る様になる。そうなると必然的にコレステロール値も上がるわけだ。
日本の民族食ともいえるご飯、みそ汁、漬物、魚介類といった和食を口にする機会が減り、結果、糖尿病や高脂血症、脳卒中などの生活習慣病として、そのツケが回ってきたとは言えまいか。 それと、食べ過ぎ。
昔から「腹八分に医者いらず」「腹八分目に病なし」と言われるが、やはり何でも程々が一番。「過ぎたるは及ばざるが如し」である。


現代は飽食の時代。お金を出せば何でも手に入る。この国は、いつのまにか「いのちの糧」である食べ物の多くを、外国に依存する様になってしまった。輸入の量が増えるのに比例して、食べ物を粗末に扱い、捨ててしまう量も増えている。農林水産省のデータによれば、家庭や食品業界から捨てられた食品廃棄物は、年間1900万トンにのぼり、そのうちの半分近くがまだ食べられる状態と言われている。これを食料不足にあえぐ8億5千万人の人達に回せば、地球上の飢餓問題も、かなり解決できるのではないだろうか。





『食こそ病の根源』
過食、偏食、不規則などの食生活の乱れが、現代人を不健康にしているのは間違いない。今から30~50年前の食生活といえば、それはそれは質素なもので、ご馳走が食べれるのは盆正月とお祭りか誕生日くらいのものだった。しかし、現代は毎日が「お正月」と言わんばかりである。
甘いジュースやお菓子、ハンバーグにスパゲッティ。これでは小児糖尿病にならない方がおかしいくらいだ。
特に子供の砂糖の摂り過ぎには注意が必要。虫歯、肥満だけでなく、行動や精神面に悪影響を及ぼす恐れさえある、と専門家は指摘する。

日本でも有数の長寿県として知られる沖縄県。かつては、男女共平均寿命は日本一で、今も女性は1位をキープしている。
郷土料理の中でも全国的に有名な「ゴーヤチャンプルー」は長寿食の代表格だし、「島豆腐」と呼ばれる沖縄の豆腐には、タンパク質やミネラルがたっぷりと含まれている。沖縄県民は、ゴーヤ、冬瓜、イモ、ヘチマなど、食べたい物は昔から全部自分達で作って食べてきた。
特に冬瓜は利尿効果が高く、これを食べれば、血圧の薬を飲んでいるのと同じ効果が得られるのだとか。
また、豊な海に囲まれているため、魚も自分たちで釣り、コンブなどの海藻も好んで食していた。コラーゲンたっぷりの豚肉も骨まで食べていた。
その豚肉も、ゆでこぼして食べるので塩分も脂も抜ける。沖縄は、塩分の摂取量が極めて少なく、しかも野菜たっぷりの食文化なので、高血圧や高脂血症も少なく、動脈硬化になりにくいのだそうだ。

ところが、アメリカが駐屯するようになってから、肉や缶詰、ファーストフードなどが入ってきた。それに飛びついたのが若い男性達。
しかも、時は折しも高度成長期。車社会による運動不足から肥満になり、生活習慣病も増え、男性の平気寿命は今、全国26位にまで転落(厚生労働省・都道府県別生命表)。
食文化が変わると寿命まで短くなる。沖縄はその典型的なケースになってしまった。
長く続いている健康ブーム(健康食品、サプリ、ダイエット、エクササイズ等)もしかり、近年の地球環境保護意識の高まりから、「eco」を合い言葉に、様々な消費がその正当性を獲得してきた。
「食の安全・安心」も、今や消費とは切り離せない大きな問題である。しかし、それ以上に重要なのは、私達人間は「食べ物でいのちを繋いでいる」という現実ではないだろうか?
最先端の研究では、口に入れた物を胃が消化し、腸から吸収された栄養素を、一つ一つの細胞が、細胞膜を通して直接摂取していることが立証されている。
何を食べるかは個人の自由だが、食した物で自分の細胞が創られていると考えるなら、当然食べる物は選ぶべきであろう。
そうなれば、何処で、誰が、どの様にして作ったかが気になるところだ。食料の6割を輸入に頼っているので、あまり偉そうな事は言えないが、結局は「農」に行き着いてこそ、生きることや命の問題と真剣に向き合うことになるのかも知れない。



Text by wk

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