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  • Posted on
    2010.12.18
  • posted by kenshin.

スイス農政~成熟した食料準輸入国





現代において、地球に存在する物事すべてが過渡期にさしかかり、人類に大きな課題と判断を突き付けられている。
そこには日本もさながら世界的に政治、経済の抜本的な改革に迫られているのが現実であるのは否めない。
中でも、やはりの第一産業である農業は最重要な事であり、その最大の理由として自給率、景観、生態系と人が生きる上で 今最も大切であるとされる、継続させられる社会として繋がっていく。

世界有数の農地を所有していると言われる日本もまた様々な政策の決断が迫られ、しかし 農政に対しても未だ抜本的な改革も示されていない。そんな中、スイス農政がその問題に対して何十年前から未来を見据え、積み重ねて来た政策が今世界中から注目されている。それは地球の存続に比例するほど、大切な事例である。

現職の高知大学講師で助教授である、飯國 芳明氏はこの問題に対してや、スイス農業についてわかりやすく、今後において未来に繋がる農政など、すばらしい見解をメデイアに発表されている。

スイスの西部に広がる平坦地域には大規模な農業を営める地域がないわけではないが、平坦地の農家数は4割強にすぎない。 平均的に見ると、スイスの農業経営規模は放牧地を含んでも20ヘクタール未満であり、欧州では小規模な経営である。 国内の農産物の国際競争力は乏しく、スイスは食料の輸出より輸入が多い食料純輸入国である。また、国際農業交渉の場においては日本や韓国、台湾などと協力してG10と呼ばれるグループを結成して、食料純輸入国の立場を国際ルールに反映する努力をしてきた。 こうしてみると、スイスは農業の形こそ違え、日本と同じ悩みを共有している国のようにも思える。しかし、スイスの農政は日本農政よりはるかに成熟した側面を持つ。 只、その理由は二つある。 一つは、スイスはEU諸国に囲まれた国であり、先進的なEU農政に刺激を受けながら、ときには、それに先んじて政策の形成を行ってきたことである。 もう一つは、国民投票である。スイスは直接民主主義の国である。連邦憲法の改正はもとより連邦法の改正に際しても、必要に応じて国民投票が実施される。 したがって、スイスの政策は国民に理解されやすいことが前提となり、合意形成に基づく政策決定がなされやすい環境がつくられてきた。 スイス農政がその先進性を発揮するのは1992年の農政改革からである。この改革ではそれまで高い水準にあった農産物価格の水準を引き下げる方針が打ち出された。農産物の輸入量制限や関税を削減するのである。また、これと同時に直接支払いと呼ばれる、農業経営に対する政府からの直接的な所得移転(お金の支払い)を導入した。 簡単に言えば、農産物の価格を下げて消費者の利益は増す代わりに、損をした農家には直接支払いで補償しましょうという仕組みをとり入れたのである。EUと歩調を合わせた改革でもあった。
この仕組みでは、農業を保護するためのお金を支払っていた人が消費者から納税者へと代わる。農政改革前は農産物を消費者が高く買うことで農家の所得が確保されてきた。しかし、改革後は、国庫から直接に農家へ補償が支払われる。 スイスは食料純輸入国であるから、農産物の内外価格差が大きい。その分、支払いのための政府負担も大きくなる。 この補償(直接支払い)は、後に農業経営の平均所得の約9割に相当する額となり、スイス連邦政府の農業予算の7割を超えるほどになる。まさに大改革であった。


 スイス連邦政府は、直接支払いを本格的に導入するに際して、連邦憲法に農業条項を加えて、国民投票で是非を問い、可決された。農政改革から4年後の1996年のことである。 改正案では、単に直接支払いを導入するのではなく、支払いを受ける農家は営農形態を環境に優しいものに変更することが義務づけられている。 エコ営農証明と呼ばれるこの要件には、例えば、農地の7%を環境に優しい土地として管理する、景観や生態系を保全する、肥料は過剰投入にならないように管理するなどがある。


2000年前後になると、今度はエト化(動物愛護の政策)が始まる。スイスにおいて動物愛護は、動物行動学のドイツ語にちなんでエトロギーと呼ぶれている。 スイス国民は農業に対して環境でも食料安全でもなく、動物愛護が一番の関心事である。 エト化の下では、家畜の生活空間を広くしたり、戸外で自由に動き回れる空間を確保する農家への直接支払いが導入されている。 他方で、動物保護のための規制も強化されており、日本では一般的な採卵鶏のケージ飼いはすでに禁止されて久しい。スーパーでは国内産平飼いの卵が1個60円程度で販売されているが、安い輸入の卵よりも国産卵を選ぶ消費者は少なくない。 近年では、生物多様性を意識した農業に対する支援を強化する動きが見られており、国民の関心を農政に反映する動きはいまだ止まっていない。


新政権が誕生した日本では、2010年度に戸別所得補償制度が新しい直接支払制度として導入された。 気になるのはその目標である。この制度では食料自給率の向上を目標にして、5000億円を超える大型予算が投入されているが、これは果たして真に納税者や消費者が農業に求めるものなのであろうか。 確かに食料の安定供給は重要な課題ではある。しかし、中長期的な世界の食料需給が比較的安定している状況を考えるとき、国内の自給にこだわりすぎるのは必ずしも説得的ではないように思える。また、自給率の向上の必要性を納税者や消費者が実感を伴って理解するのは容易でない。
高知大学教育研究部総合科学系・教授は提唱している。 「 日本の農政は、いま直接支払制度を本格的に導入しようとする転機にさしかかっている。スイスでいえば1990年代の半ばの段階に相当する。納税者や消費者と向き合い、そのニーズに応じて制度を設計する努力がいまこそ求められている。」


このように、農政の現状を知る事で、様々な分野にも言える事であろうと強く思う。 特に、先進国と言われる国々、日本も含め目の前にある事に翻弄され、本来積み重ねてきた事を自ら崩壊しているように感じてならない。もっと、生活する上で、感覚を研ぎすまし、フラット化している情報をかき分けてまず現実を知ること。 そして危機感を持って人が人である為に、どう生きていかなければ行けないのか本気で思考し行動に移さなければいけないと切に思う。 やはり、痛みが伴っても何かを保守する事や都合だけでない、人として存在を感じ取れる国であり生活を目指したいものです。















reference


「自然資本の保全と評価』/飯國芳明 


text by H

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