THE SALON STYLE JOURNAL

ART

 Abdul Mati Klarwein

圧倒的な描写力とアシッド感たっぷりの色彩感覚。 言わずと知れた、カバーアート界の巨匠であり、デザイン界の異端児 Abdul Mati Klarwein  。 個人的に、やはりsantanaの『天の守護神』のカバーアートで衝撃を覚えて、音楽もさながらそれ以上に カバーデザインの作風に魅せられた。 それから、作者を探して、それがクラーワインの『受胎告知』であったことを インターネットなどない時代にあらゆる資料を見て、 調べていた思い出がフィードバックします。 60年代以降から70年代にかけては多くのレジェンドミュージシャンのカバーアートに使用されていて、それも、決してミュージシャンに依頼されて描いたものでないものも存在して、その圧倒たる絵画の描写力に、多くのアーテイストが魅了されて、全く音楽とは無縁で抱き合わせた コマーシャルを意図としないアルバムアートのオファーが絶えなかったのも頷けます。 アブドゥル・マティ・クラーワイン(Abdul Mati Klarwein)は名前からも分かるようにパレスチナ系です。 彼はナチスが台頭するドイツ、ハンブルグで生まれ彼の家族にはユダヤの血が入っていたため故国パレスティナへ逃れます。 大戦後1948年に故国パレスティナは皮肉にもユダヤ人に占領され、今度は故国を後にします。パリに滞在中絵に興味を持ち現在のような画家を目指します。 その後住んだ北アフリカ、トルコの民族、ヨーロッパのシュール・リアリズム、アメリカのポップカルチャーが彼の作風に影響を与え、同じようなものを目指すダリと親交があり、ウォーホールに尊敬されていた人です。 昨今ではなかなかここまでのショックを与え とてつもないエネルギーを発するアルバムアートワークは見られないのが寂しい限り。 やはり時代の変革期によって生まれるパワーは良し悪しだけでは測れない、感覚に訴えかけるものが希少だと感じる。



  • 2015.3.07