THE SALON STYLE JOURNAL

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「対訳 亀の島」 ゲーリー•スナイダー

詩人ゲーリー・スナイダーの詩集『亀の島』
以前に「The Magazine」のほうでゲーリー・スナイダーの単独インタビューに成功しているが、その彼の1975年のピューリッツア賞(詩部門)受賞作品を今回は紹介。
スナイダーの作品は、人間と自然との関係をテーマにしたものが多く、本作品も1956年から1968年までの期間の大半は京都に滞在し、相国寺や大徳寺で臨済禅を学んだ彼のビートニク全盛の時代に書かれたもの。70年代以降のアメリカ文学に大きな影響を与えたポピュラーな詩集の一つで人々に多大な影響を与えた。
しかし彼は当時を振り返りこう語っている

「世界を変えたい」と日常的に言っていたけど、まさかそれが可能だとは誰も思ってなかった。確かに政府のあり方とか、権力とか、自由について、強い感情を持っていた。人は無力に感じたとき、あきらめてしまう傾向があるけれど、当時の僕らは無力ながら、あきらめることはしなかった。考え方が正しいことはわかっていたからね。しかし、何かを動かしているという自覚はなかった。今も若者たちはビートに興味を持ってくれるし、ケロアックの本はまだ売れ続けている。カウンターカルチャーの効果は、いろんな形で、いろんな国で、いまだに続いているのだろう。ビートがやったのは、歌や詩を通じて、そして人々を驚かせるようなイマジネーションあふれる方法で、体制に反対するという精神を表現する、ということだった。


本作品「亀の島」とは北米大陸のことであり、多くのインディアン部族はこの大陸を亀の背に乗っている島だと考えていた。
インディアン並びに禅に共通して横たわっている視点を取り戻すことこそ未来を創造できるかどうかの試金石だと語り、近代社会の文明が歴史の中でいかに変容し人間自らの手で首を絞めているかという事を暗に描き、彼は生態系を視野に入れた新しいライフスタイルをこの詩集で示唆している
素晴らしい一冊

  • 2012.11.23