THE SALON STYLE JOURNAL

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~アニメロマネスク~ 大人のためのアニメーション?

一般的には『アニメラマ』『アニメロマネスク』と聞いて ??......となるかもしれません。しかし、古くから日本のアニメーションに興味があり、特に日本漫画界の神様 手塚治虫や虫プロダクションが好きな方からすれば、周知のワードであり、記事としてピックアップするのは恐れ多い感じもするほどですが、今更ながら、今だからこそ、このクオリテイー溢れるアニメーションの紹介をしたいと思います。それこそ今日では、宮崎駿の描き出した稠密な表現があり、大友克洋のAKIRA もまた まるで未来を透視し先読みしたかのような内容と圧倒的な未来像と退廃的なビジュアル表現、『エヴァ』のような特殊にして広い支持を得る作品が生まれ、『破』では歴史上のアニメでも最高クラスのクオリティの活劇アニメ表現がなされた。その他、様々なアニメの歴史を経て 現在では数多く世界に認められ脚光を浴びてる日本のアニメーションは存在します。ただ、その中でも、個人的にはある視点では今から紹介する作品と類似する?超える?ものは未だ日本のアニメーションでは見たことがないぐらいのオリジナリティーやインデイビジュアリテイーが溢れ、見たときの衝撃が今なを頭から離れません。
その誕生までのストーリーや作品詳細をわかりやすくまとめた記事からリファレンスし紹介させて頂きます。

現在、「アニメーション」は、その娯楽性と芸術性から、もはや日本を代表する文化の一つとなりました。「アニメーション」がこのような地位を得る今から30年前、アニメ=子供の娯楽作品だった時代、「大人のための作品」という高い志を持って製作されたアニメーションが存在しました。それが、製作総指揮手塚治虫,製作虫プロダクションによる「アニメラマ-3部作-」です。しかし、この試みは、第一作「千夜一夜物語」、第二作「クレオパトラ」こそ大成功を収めたものの、続く第三作「哀しみのベラドンナ」では内容が直接的な性的描写が用いられた場面もあり、あまりにも過激かつ前衛的などの理由から、当時、正当な評価を得ることもなく、今日まで「幻の作品」として陽の目を見ることはありませんでした。
『千夜一夜物語』『クレオパトラ』に続く大人のためのアニメーションの第3作の『哀しみのベラドンナ』はスケールの大きな歴史絵巻であった前2作とは、ドラマも映像の作りも大きく異なっており、キャッチフレーズも「アニメラマ」から「アニメロマネスク」に変更さています。原作は歴史学者ジュール・ミシュレの「魔女」。監督は「千夜一夜物語」「クレオパトラ」でも手塚治虫と組んだ虫プロの主力演出家、山本暎一。作画監督は、前2作も担当した才人、杉井ギサブロー。また挿絵画家の深井国をフューチャーした水彩画によるイラストレーションは圧巻。セル画テイストを極力排し、静止画の多様、あるいはイラストを動かすといった実験的な手法から、かつてない実験色のアニメーションに仕上がっています。山本監督の情熱と才能が炸裂したフィルムであり、「作家集団」虫プロダクションの集大成です。「アニメラマ」が誕生した1969年~1973年。それは様々な才能がジャンルを飛び越え、渾然一体となり、独自のオリジナリティが開花した時代でもあります。「アニメラマ」にも各界を代表する才人たちが集結し、夢のような豪華な顔ぶれとなりました。虫プロの主力演出家にして「宇宙船艦ヤマト」など数々の脚本を手がけた山本暎一を総監督とし、「タッチ」「銀河鉄道の夜」の杉井ギサブローも全作品の作画監督を担当。「哀しみのベラドンナ」には、挿絵画家の深井国、写真家の森山大道、漫画家の林静一、声の出演は長山藍子、仲代達矢などが参加。「千夜一夜」には、キャラクターデザインに「それいけ!アンパンマン」のやなせ・たかし。音楽には電子音楽界の巨匠、富田勲や、伝説のアートロックバンド、ヘルプフル・ソウルのチャーリー・コーセーが参加。声の出演は主人公のアルディンに青島幸男、他にも芥川比呂志や岸田今日子、小池朝雄。また、遠藤周作、大橋巨泉、北杜夫、小松左京、筒井康隆、立川談志といった著名人が特別に「一言出演」をしているのも当時話題になりました。「クレオパトラ」には、キャラクターデザインに「ヒゲとボイン」の小島功。声の出演は中山千夏、ハナ肇、なべおさみなど。さらには「サザエさん」「カムイ外伝」「ハレンチ学園」といった当時の人気キャラクターまでもが友情出演しています。



このように現代の日本のアニメ界の基盤を牽引してきたレジェンド達の英知や才気が集結して、『アニメラマ』『アニメロマネスク』が誕生したストーリーで、高度成長期の時代背景も手伝い実現したプロジェクトだったかもしれませんが、才あるアーテイスト個々が本当にその当時のエネルギーを作品に込めて、決してビジネス(商業)優先だけでは起こらない、奇跡のシナジーが生まれたのだろうと感じます。特に『哀しみのベラドンナ』は手塚治虫はノータッチの作品ながら、これほど、実験的な手法で作られ、他の商業アニメ作品にはあまり見られない特色が多くみられ、映倫や様々な規制もありながらも 現代に存在し見れることだけでも感極まる思いです。正直、小さなお子さんと見るのはお勧めしませんが、アニメを見ない方でも是非日本の誇るアニメのオリジナルとも言えるべき 何とも、大人のためのアニメーションというキャッチにもいやはや男としては心動かされる?笑 そんな安易な気持ちでも見るきっかけとなれれば、見れば、その想像をすべて吹き飛ばされほどの作品内容でありクオリテイーです。アニメーションの枠を超え 必ず度肝を抜かれるはずです。あるアニメ評論家が 『後にも先にもアニメがいくら発展しても追いつけないマジックがこの作品には無数に散りばめられている。。』とまで評される。そんな作品を体感してもらいたい。すでに、10年前の2006年にリバイバル上映し、現在は3部作のDVD boxセットも発売されています。これを期に30年以上前の70年代にすでに存在し当時の時代をも超越したものが、今の時代だからこそ、再評価され、日本のアートフィルム、アニメーションの真髄はここにありとき!! と感じてもらえるかと思います。

  • 2016.4.24